今回紹介させて頂くサムラッチ錠からサムラッチ錠への取替の工事は、基本的に新しいサムラッチ錠へお取替え不可なドアです。
框(かまち)と呼ばれる部分の寸法が小さく、通常のサムラッチ錠へ交換ができません。
そのため、通常はレバーハンドル錠へ切り替えを致します。
ただ、このお家にご高齢の方がお住まいになられているとの事で、そのご高齢のご家族が、長年サムラッチ錠で慣れているので、レバーハンドル錠に変わってしまうと戸惑ってしまう可能性が高いので、どうしてもサムラッチ錠への交換がご希望でした。
そこで、半ば強引に狭い框にサムラッチ錠を取り付け致しました。
が、基本的には狭い框用に作られたレバーハンドル錠が見た目・強度的によいと思われますので、今回のように特別な事情がない限りはレバーハンドル錠をおすすめ致します。
前置きはこのあたりにして、ここから狭い框のドアにサムラッチ錠を取り付けた際の工事を紹介していきます。
今回サムラッチ錠を交換するドアは、下の写真のドアです。
写真ではわかり辛いのですが、框が狭いです。
写真では伝わらない可能性もありますが、今回作業をした上の写真のサムラッチ錠は、幅がスリムに作られているにもかかわらず、サムラッチ錠の左右の余裕が少ないです。
対して、下の写真は通常良くあるタイプのサムラッチ錠が付いたドアです。
サムラッチ錠自体が幅広で(通常これくらい幅がある)、それにも関わらず、サムラッチ錠の左右に余裕があります。
では改めて、既存の錠前を外す前の写真を載せていきます。
それではここから、ドアの写真ではわかりにくいので、錠ケースのサイズを比較しましょう。
今まで付いていたサムラッチ錠と新しいサムラッチ錠の錠ケースを並べることで、違いがすぐに分かるかと思います。
奥行の長さが違うことがお分かりいただけるでしょうか。
通常サムラッチ錠は一般的に、バックセットが60ミリが標準です。
今回取り替えるサムラッチ錠もバックセット60ミリ。
(バックセットとは、ドアの先端から、把手(とって)の中心までの距離です)
対して、今まで付いていた狭い框用のサムラッチ錠のバックセットは38ミリ。細いです。
このサイズのサムラッチ錠は現在ありません。
レバーハンドル錠では、このサイズ以下の物がいくつもあるので、通常はレバーハンドル錠へ切り替えるというわけです。
なお、錠ケースのフロントと呼ばれる縦の長さが、新しいサムラッチ錠の錠ケースの方が短いですが、この部分に関してはどのようにでもなるので、問題はありません。
それではこの奥行の長さの違いがどう影響するか、実際に古い錠前を外したところに、新しいサムラッチ錠の錠ケースを入れ込んでみます。
そしてこの、もともとあったサムラッチ錠の錠ケースが入っていた部分に、新しいサムラッチ錠の錠ケースを入れると、下のような状態になります。
框の奥行きが少なくとも10センチは欲しいところですが、8センチにも満たない状態です。
これでは錠ケースが入りません。
さて、このような状況なので、新しいサムラッチ錠の取り付けが困難でした。
バックセットの小さい(錠ケースの奥行き狭い)レバーハンドル錠へのお取替えだったらずいぶん楽だったと思います。
それではここから、この狭い框にサムラッチ錠を取り付けていきます。
まずは、邪魔をしていた奥の壁を、新しいサムラッチ錠の錠ケースが入るよう削ります。
ただし、この部分には縦の框と横の框をつないでいるネジが入っています。
ここ以外にもつないでいる箇所があり、また、強度が落ちないように考えて施工しているので、強度の落ちは少ないですが、やはり削る前より若干強度が落ちる可能性があります。
工事が困難、仕上がりの状態だけでなく、このような部分でも、狭い框に対応したバックセットの小さいレバーハンドルをおすすめしています。
今回は、ご高齢のご家族が、操作が変わると戸惑う恐れがあるので、戸惑わないようにを一番にしているので、サムラッチ錠なのですが、基本的には上記の理由によりレバーハンドル錠をお勧めします。
話が横道にそれましたが、新しいサムラッチ錠用に、必要な穴をさらに追加していきます。
さて、今回は、既存の錠前より、新しいサムラッチ錠の錠ケースの方がフロントの長さが短いため、ドアに補強を入れていきます。
段付き金具と言うものを使って強度と長さを確保していきます。
この段付き金具は上の三点がドアに取り付ける用の穴、下の一点は錠ケースが付く穴です。
段付き金具用にドアに三点穴をあけます。
ここまでくると、あとは新しいサムラッチ錠をドアに取り付けていって作業完了です。
これで完成です。
しっかりと取り付けが出来ました。
と言いたいところですが、サムラッチ錠の特に周りのプレート部分が、縦の框の範囲内に収まっていません。
縦の框に収まっている状態の写真を以下に二枚載せますので、違いを確認してみてください。
縦の框の範囲内に錠前が収まっていないと、見た目がこんな感じになります。
ドアを左側から見たときに隙間が出ています。
もちろん、作業前に仕上がりがこうなることを説明し、ご了承を頂いております。
最初にお伝えした通り、ご高齢のご家族が戸惑わないようにを第一に考え、お客様と一緒に決めた結果、今回はこういうデメリットがある事を承知の上で、サムラッチ錠を取付いたしました。
お客様は、仕上がりを見て却って、前の錠前よりもゴージャスになったと喜んでくださいました。
このように、同じサムラッチ錠を新しいものに取り替えるという作業でも、お客様のご要望によって、選ぶ錠前と、それに伴って工事方法が変わってきます。
見た目重視だったり、操作性重視だったり、コスト重視だったり、今回のようにご高齢のご家族が戸惑わないようにを一番にもってきたり、デジタルロックをご要望されたりなどなど。
その都度お客様のご要望をお聴きして、またドアのコンディションや、仕上った時のことを考慮して、様々な錠前の中から最適なものを提案させて頂きます。
今回は、通常は取り付けしないドアへ、サムラッチ錠を加工して取り付けた工事の紹介でした。
それでは今回はこのあたりで。