そのお客様の話によると、しばらくどうしたものかと悩んでいたところ、
「そうだ、ここはドアではなく鍵の部分なのだから、いつも会社で頼んでいる鍵屋の高橋さんに頼んでみよう。
あの人はいつもなんだかんだと器用に工事をしているので、あの人なら何とかしてくれるかもしれない」
と、わたくしのことをふと思い出して、電話を掛けて下さったと言うことでした。
お世話になっているビル管理会社で、いつも受付対応をして下さってる方でもありますし、このように嬉しい言葉を言って下さると、やはり頑張らねばと、やる気が出ます。
(いや、普段からやる気はありますよ)
こちらのお宅に付いている錠前は、確かに廃番品で、サイズも微妙に特殊であり、代替品もなく、錠前の選定に非常に苦労しました。
しかし、色々な施策をした結果、最終的にはリフォーム業者さんが提示した金額の5分の1以下の金額で収めることができました。
さて、以下が今回取り替えることになった室内錠です。もうすでに廃番品となっているものです。
6個あるうちのいくつかは、もうすでに内部にガタがきていて、いつ壊れてもおかしくない状況でした。
今回取り替える際に一番苦労したのは、このエスカッションやエスカチオンと呼ばれる長座プレートの長さです。
このプレートが一般的な錠前よりもかなり長く、取り外した時に出てくる切り欠き穴が隠れる錠前がなかなか見つからず、その点が一番苦労しました。
余談ですが、長座プレートの呼び方は、一般的にはエスカッションと呼ぶメーカーが多いのですが、美和ロックではエスカチオンと呼びます。メーカーによって呼び名が違う物は、錠前の種類などでもたくさんあります。
この錠前を新しいものにしましたが、錠前の選定も難しかったですが、加工も色々と大変でした。
下の写真が施工後の新しい錠前です。
さて、ここからは今回行った工事の様子などについて紹介していきます。
上で写真を示したように、錠前を新しいものに取り替えたのですが、前の錠前の特殊な切り欠き穴を隠すと言う条件と予算が合ったのは写真で紹介した長沢製作所のものしかありませんでした。
もちろん、室内錠で代替するのではなく、玄関に使われる玄関用の錠前で代替するのであれば、もっともっとたくさんの種類の錠前からお選びいただく事が可能だったのですが、それだと金額が一気に跳ね上がってしまいます。
玄関用のものは、錠前自体が高いと言うのもありますが、ドアへの加工がかなり必要なので、その分加工費が掛かってしまうからです。
しかし高い分、玄関用で代替すると、アルミ・ステンレス・黄銅など様々な材質、様々なデザインのものから選ぶ事が出来ます。
(それでもリフォーム業者さんが提示した、一か所6万円などと言う高額になる事は、高価な材質で、デザインが複雑なものを選ばない限りありませんが・・・)
そういうわけで今回は、WEST社の廃番品から、長沢製作所製の錠前へ切り替えたのですが、切り替える際に一つ大きな問題が。
それは、長沢製作所製のものの方が、ケースと呼ばれる芯の部分が小さい事です。
木製ドアの場合、小さいものから大きいものへ切り替えるのは、比較的容易です。ノミを使って木を彫っていけば良いからです。
しかし今回のように、その逆の大きいものから小さいものへ替えると言う工事の場合は、切り欠き穴を隠しつつも、強度や耐久性も確保せねばならないので大変です。
ところで今回、今付いているWEST社の錠前の切り欠き穴を隠す事が出来て、なおかつ予算内に収まるのが長沢製作所のものしかなかったわけですが、そう言った条件がなくても長沢製作所の製品に切り替えるメリットがあるので、他社製品からの切り替えの際は、長沢製作所の物をお勧めしています。
それはなぜかと言うと、長沢製作所の製品ラインナップの多くには、フェイルセーフ機能と言うのが付いているからです。
フェイルセーフ機能と言うのは、錠前の寿命が来て壊れる際に、必ずドアが開けれる状態で壊れるようになっている機能の事です。
特にトイレなどは使用頻度が高く、錠前が壊れてドアノブをひねってもドアが開けられず閉じ込められてしまうと言った事故が多数起こっています。
このフェイルセーフ機能が付いていれば、万が一錠前が壊れてしまった時でも、閉じ込められて出れないなどと言う心配はなく、安心して使用出来ます。
そこで、カギの救助隊福岡では、トイレのレバーハンドル錠の交換の際は、長沢製作所製のものをお勧めしています。
(トイレ内に閉じ込められた方を救出した時の記事は、コラム トイレに閉じ込められた方 の記事をご覧ください。)
さてここからは、
施工前→古い錠前を取り外した切り欠き穴の写真→新しい錠前のために加工して新たに追加した切り欠き穴→施工後
の4段階の写真を載せようと思います。
新しく取り替える長沢製作所製の錠ケースが小さい事については、わたくしの方で事前に段付き金具と言うのをドアに合わせて作成し、対応いたしました。
上の4枚の写真は、トイレのドアの写真です。参考までに違うドアの写真も載せてみようと思います。
まずは、脱衣所のドアの写真。トイレと同じく表示錠と呼ばれる物を使いました。
(表示錠とは、鍵が掛かっている掛かっていないが一目でわかるよう、表示の色が変わるものです。表示窓のないものも選択いただけます)
続いては、その他のお部屋のドアの写真です。こちらは鍵のかからない空錠(一般的にはそらじょうと読む事が多いです)を使いました。
これと同じドアが4箇所あり、同じ施工をいたしました。
今回は、リフォーム業者さんから一箇所6万円以上、それが6箇所なので36万円以上の費用が掛かるとの事で途方に暮れていたところ、いつも会社で使っている鍵屋さんなら何とかしてくれるだろうとお電話を頂きました。
その結果、6箇所の総額が9万円弱までに抑える事が出来ました。
写真と文章でさらっと書いていますが、実際は工事としては難工事でした。特に錠前の選定にはかなり多くの時間を費やしました。
実は先に、現在付いているWEST社の廃番品とほぼ同サイズで、少しの加工で取り替える事が出来る錠前を、美和ロック製のもので見つけていました。
とある型番の錠前と、とあるサイズのエスカチオンを組み合わせると(長座プレートの事を美和ロックではエスカチオンと呼ぶ事は前述しましたね)、ほんの少しの加工で取り替える事が出来、加工費用はそれほどかからない事がわかり、メーカーへ注文しました。
しかしいざ注文をすると、そのエスカチオンは製造中止となっている事が判明。以前のカタログには載っていたのですが、今年版のカタログからは姿を消している事が、後になって分かりました。
そこでもう一度最初に戻って、ドアを綿密に採寸し直し、再び錠前を選定する必要が出てきました。
ずいぶん悩んだ結果、予算内に収まる物として、今回の長沢製作所製の錠前へ行きつきました。
工事の方はと言えば、現場での作業も大変ではありましたが、事前に店舗にてボール盤などを使い、このお家の室内ドア専用に、段付き金具を12個加工して用意したのですが、それも結構大変でした。
しかし、全ての作業が終わった翌日、お客様から「ありがとうございました」とメールを頂き、それまでの苦労は一気に吹き飛びました。
鍵屋と言うこの仕事で、自分の専門的な知識を生かし、多くのお客様のお役にたてるのは本当に有り難いことだなと感じた工事でした。
他社で廃番品だからと高額な金額を言われたり、断られたりした工事でも、私たち鍵の救助隊福岡では対応が出来る場合があります。お気軽にご相談下さい!