このページでは、残念ながら引違戸錠が取り付け出来ない引き違い戸に、面付鎌錠を取り付けた際の工事について紹介していきます。
先にご依頼の内容をお伝えしますと、離れて暮らすご家族からのご依頼で、
「この家に住む恒例の母親が今ついている鍵が使いにくいため、高齢者でも使いやすい鍵に変えてほしい。」
と言う内容でした。
こう言った内容の場合は、通常は引違戸錠を新規で取り付けします。
念のため補足しておきますと、引き違い戸とは、引戸の種類の一種で、二枚の引き戸が交差する(行違う)タイプの引戸の事です。
このタイプの引戸の場合で、ご高齢者でも使いやすいものとなると、美和ロックのPSSLを通常は使用します。
このタイプは、鍵穴がディンプルキーなので、鍵に方向がなく、裏表どちらの方向でも鍵が挿し込めます。
引違戸錠には、外から鍵をかける際、鍵を押してグルグル回すタイプや、室内側から鍵をかける際に、室内から棒を挿し込んでグルグル回さねばならないタイプなどもありますが、これらはご高齢の方には非常に使い辛さを感じさせてしまう事が多いです。
その点、PSSLは、外から鍵を押し回しする必要がなく、鍵を左右に90度回せば施解錠が出来、また室内側からはツマミを上げ下げするだけで施解錠が出来るので、操作が簡単です。
その上、防犯性能も高いので、通常はこのPSSLを使用します。
ですが、残念ながら今回はPSSLを含め、他のメーカーの引違戸錠も使えませんでした。
そこで、結論から先に申しますと、今回は面付鎌錠というもので対応させて頂きました。
通常、引違戸錠が付けれない戸で、使い勝手の良い物をご希望の場合は、引戸錠や戸先鎌錠などと呼ばれるケースロックを戸先に彫り込みます。
防犯性能とともに、外観がすっきりしていて、見た目がすっきりしているからです。
今回はその戸先鎌錠系も、枠の幅が狭いので取付不可でした。
そのため、面付鎌錠で対応したというわけです。
なお、上の写真の引戸錠(戸先鎌錠)の施工例は、引戸に鍵取付(引戸錠・戸先鎌錠)のページに載せておりますので、ご興味のある方はご覧ください。
引き違い戸ではなく、戸が一枚だけの片引戸のお家の方は、通常このタイプでの施工となります。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、上で説明させていただいた通り、今回の引き違い戸は、引違戸錠も戸の中に彫り込むタイプの引戸錠も使えなかったので、面付鎌錠の取り付けにて対応させて頂きました。
それではここから、その工事について紹介いたします。
まず、今回面付鎌錠を取り付ける引き違い戸はこちらです。
この引き違い戸には、すでに鍵が付いているのですが、鍵穴が引き違い戸のセンターではなく、端っこに寄っているのがお分かりいただけますでしょうか。
少しタイプは違うのですが、通常鍵穴が付いているべき位置の参考写真を載せます。
引き違い戸のセンターについているのがお分かりいただけるかと思います。
では次に、今回工事する引き違い戸を室内側から見ていただきます。
外から見たとき、鍵穴が右側に大幅にずれていました。
室内側はどうでしょうか。
二つ棒が並んでいるうちの、下の方の銀色の棒が、この鍵の室内側から開閉するためのツマミです。
このタイプは内側からも外側からも鍵が開閉できるタイプで、外側からは鍵を挿し込んでぐるぐる回してねじ込んでいき、内側からは、銀色のねじ込み棒を挿し込んでぐるぐる回してネジ状の錠を締めこんで鍵をかけるタイプです。
(上にある金色の棒は、室内側からしかかけれない、ネジ締まりです)
この銀色のねじ込み棒の位置は、センターより少し右にずれています。
この位置で、外側の鍵穴と、内側のねじ込み棒がちょうど位置が合うようになっているのですが、本来ならば、外側の鍵穴が、大幅に右側にずれて付いているのならば、室内側のねじ込み棒の位置は、大幅に左側にあるはずなのです。
それが、このような位置で、外側の鍵穴と内側のねじ込み棒の位置が合うと言うことは、つまり、二枚の引戸の位置が大幅にずれていると言うことです。
内側からよく見ると、外の戸の位置が、うっすら影となって見えているのがお分かりいただけますでしょうか。
内外の戸の位置がぴしゃりとあっているならば、このように外側の戸が見えるはずがありません。
少し分かりにくいかと思いますので、片方の戸を少し外した状態でお見せします。
これは、戸枠(建物についている方の枠)の横幅に対して、二枚の引戸の横幅が大きすぎます。
しっかり大きさが合っている建物でも、長年使っていると、戸車の摩耗や、レールの曲がり、その他地震の影響などで枠が傾くなどの理由でセンターが合わなくなることはありますが、この引き違い戸に関しては、そう言うレベルではありません。
これってつまりどう言う事かと言えば、この戸を作った人がいい加減な仕事をしたのか、もしくは、コストを抑えるために、一からこの戸枠のサイズに合わせて作成するよりも、たまたま上下のサイズの合う戸があったので、それを使ったほうが費用がかからなかったため使用したの、どちらかではないかと思います。
ただ、いずれにせよ、通常は有り得ないことではあります。
そのため、自分もずいぶん現場で悩みました。
今回取付工事をする引戸があまりにも特殊だったため、ここでも前置きの説明が長くなってしまいました。
ここからはいよいよ面付鎌錠を取り付けていきます。
ここまで前置きが長すぎて、文字数がかなり多くなってしまったので、ここからはサクッと読めるように留意して書いていきます。
この引戸に、面付鎌錠を取り付けていくのですが、この家にお住まいの方がご高齢のため、手すりが付いているので、手すりの邪魔にならない位置に取り付けていきます。
そして、穴あけ加工が終わったら、面付本締錠を引戸に取り付けていき完成です。
これで、面付鎌錠の取り付けは完了です。
しかし、工事はこれで終わりではありません。
面付鎌錠を取り付けていない方の引戸が、このままでは鍵がかからない状態ですので、何かしらの工事を行う必要があります。
それではここから、面付鎌錠を取り付けていない方の引戸の工事を紹介していきます。
引違戸錠であれば、一つの錠前で、左右二つの引戸を施錠することが出来るのですが、面付鎌錠は、付けた引戸しか施錠が出来ないため、もう一つの引戸にも何か工事をしてやる必要があります。
もう一つの引戸には、外側に鍵穴のない、面付鎌錠を付けるのも一つの手です。
が、今回のご要望の一つに、もしかしたら近々引っ越すかもしれないので、コストは抑えたいというものもありました。
こう言った場合、オートラッチを取り付けるのが、コストを抑えるのに有効です。
この写真の例では、下側に取り付けていますが、今回は枠などの関係上、上のほうに取り付けます。
オートラッチとは、頭のボタンを押すとロックがかかり、横のボタンを押すとばねの力でロックが解放状態となるので、使い勝手が良いです。
ただ、オートラッチは便利ですが、ばねの力が強いため、施解錠の時に力が要ります。
そこで、このお家にお住いのお母様に、オートラッチを触って確かめてもらったところ、やはりご高齢者の力では、開け閉めがしにくいとの事でした。
そこで、通常ならば使い勝手を重視してオートラッチを入れるところですが、今回は、力が必要ない丸落としなどと呼ばれている部品を取り付けることにいたしました。
取り付け後の写真が下の写真です。
オートラッチだと、頭のボタンを押すだけで施錠、横のボタンを押すと解錠と操作が楽なことに対し、こちらは施錠時は棒を上にあげてくるっと回して、溝に引掛けるので、ほんの少し手間がいります。
しかし、こちらの引戸はほぼ開け閉めすることはないとの事でしたし、何より、ご高齢のお母さまでも、軽い力で開け閉めが出来ることが何より重要なので、今回は、丸落としでの対応となりました。
これで、今回の工事は無事に完了となりました。
今回は、非常に特殊な引き違い戸の案件でした。
費用は戸の状況や材質、取り付ける部品によって大きく異なりますが、今回の工事では、概ね税別で35000円ほどでした。
このように、引戸が戸枠とサイズが合っていないという案件はほとんどないとは思いますが、このような状態の引き違い戸でも、対応は可能ですので、もし他社で工事不可と言われてしまった場合でも、諦めずに、まずはお気軽にご相談ください。
ただし、誠に勝手ながら、ご相談は福岡県内のお客様に限らせて頂きますので、何卒ご了承くださいませ。
それでは今回の施工例紹介はこの辺りで。