先日、ドアの開閉が悪い。ラッチが引っかかってうまくドアが閉まらないようなので修繕をして欲しい。
と言う内容のご依頼を頂き、行ってきました。
結果、ラッチ部分のみに問題があるわけではなく、把手(とって)内部にかなりの錆が発生してしまっていることが原因でした。
海から二キロほど離れた建物ですが、潮風による塩害ではないかと推測されます。

現場に着くと、ラッチが引っかかってドアの開閉がかなり困難で、一度ドアを閉めると開けるのに物凄い力が要るとの事で、お客様自身でラッチを外した後でした。
なお、ラッチ(正式名称はラッチボルト)とは、ドアを閉めた際に、ドアを仮に係留しておくためのものです。
把手を操作すると引っ込む部品です。
余談ですが、鍵を操作した時に出てくる部品は、デッドボルトと呼びます。

なお、外したお客様と言うのは、実は顧客の建物管理会社の方で、工事の知識が多少ある方です。
ラッチを外した後、フロントと呼ばれる金具をキチンと留めています。
この金具を留めずにドアを閉めると、場合によってはドアが二度と開きません。
つまり、知識のない方は決して外してはいけない箇所となりますので、通常は部品を外したりせず、そのままの状態でご依頼ください。
さて、そんなわけで、まずは原因を調べるため、分解していきます。
実は、先述した通り、この建物は海から2キロの距離にある物件なので、塩害により、ラッチの入っている錠ケースのみではなく、把手内部にまで錆が出ているのではないかと思い分解しました。
するとやっぱり、把手の内部にまでひどい錆が出ていました。
こうなると手遅れとまでは言いませんが、復旧がかなり困難で、費用もそれなりにかかってしまいます。
このページの後半では、こうなることを防ぐための日ごろのメンテナンスもお伝えします。
さて、何が困難かと言えば、まずネジが錆で固着していて、外すのが困難だと言うことです。
CRC556などの浸透潤滑剤を使っても、全く外れませんので、まずはミニバーナーを使ってネジを焼いて外してみます。
このミニバーナーは、連続で長時間使用しているとバーナーの内部が焼けて壊れます。
火力もあると言えばあるのですが、ガスバーナーに比べると弱いです。
だからといってガスバーナーは使用できません。
なぜなら、ミニバーナーはネジ一本を集中して焼けますが、ガスバーナーだと、ほかの箇所にも熱が行ってしまうので、把手全体が焼け、塗装がダメになる可能性があるからです。
そんなわけでミニバーナーを使用して、何本かのネジは外れましたが、何本かは固着がひどく、ネジが途中でねじ切れてしまいました。
こうなると最悪です。
ドリルで正確にまっすぐ穴を開けて、その後新しいネジが入れれるように、タップと言う器具を使い、ネジ山を作っていかねばなりません。
なお、その作業の写真は時間の都合上、撮れませんでした。
把手をすべて分解し、錆を削り落としてスムーズに動くようにしたあと、元通りに組み立てていきます。
外されていたラッチも入れ込んで完成です。
時間は2時間ほど要しました。
さて、把手内部の錆は、日ごろのメンテナンスで避けれる場合が多いです。
そこでここからは、ご自身でもできるメンテナンス箇所をお伝えします。
錆防止の日ごろのメンテナンスについて
さて、まずは外側からですが、緑の丸の箇所に注油していきましょう。
その際、ピンクで印をつけた鍵穴の箇所に絶対に油が入らないようにご注意ください。
鍵穴は鍵穴専用の、粉末の潤滑剤をご使用ください。
それ以外のものを使用すると、最悪壊れます。

外側に注油が出来ましたら、内側も同様に注油していきます。
把手の内側にも注油が出来ましたら、今度は錠ケースにも注油していきます。
上の写真は、ラッチが抜かれた状態なので、注油しやすいですが、実際にはラッチがあるため、やりにくいです。
他の物件の写真ですが、ラッチ有りの場合の注油風景を載せていきます。
ラッチを引っ込めたり、隙間から内部に注油していきます。
その際真っすぐだけではなく、上側にデッドボルトがあるので、デッドボルトの方にも油が届くように、斜め上に向かってスプレーしていきましょう。
また、デッドボルトはひっこめた状態で注油したら、デッドボルトを出し、出した状態でも注油していきましょう。
さて、ダブルロックの場合、主錠の方はラッチがあるので、ノズルを挿し込む隙間が多いのですが、補助錠の方は、隙間がありません。
(再び先ほどの写真を載せます)
写真の一番下の丸が補助錠です。
この場合隙間が全然ないので大変ですが、デッドボルトを出した状態にして、とにかく内部に油が届くよう、長めに油を噴射していきます。
その際、油の跳ね返りがあるおそれがあるので、目に入らないよう、ゴーグルやメガネを着用したり、跳ね返りが来ないようノズルの付近に雑巾を当てたりなどしたほうがよさそうです。
もちろん、汚れてもよい服装で行なってください。
注す潤滑剤の種類

1.鍵穴部分の潤滑剤
まず、鍵穴部分(ピンクの丸で示した箇所)に関しては、必ず鍵穴専用の粉末タイプの潤滑剤をご使用ください(上の写真の左側)
油脂類を注油すると、注したのが粘度の高い、硬い油なら、注した瞬間に動きが悪くなり、鍵が開かなくなります。
浸透潤滑剤などの粘度の低いサラサラな油だと、注してしばらくの間は動きが良くなりますが、しばらくすると油分に埃がくっつき、中がヘドロ化して鍵が開かなくなります。
つまり、どんな油でも、注すと鍵穴には悪影響です。

余談ですが、夜中などで鍵を挿し込んだが開かないなどが発生し、鍵屋を呼ぶには夜間作業料で高額になる・ホームセンターは開いていないので鍵穴専用の潤滑剤は手に入らない・とにかく今夜は家に入り、翌朝などには必ず鍵屋さんを呼ぶと言った条件が揃っているときは、コンビニに行くと、CRC5-56などの浸透潤滑剤が売っているので、緊急でそれを注してしのぐと言う方法もあります。
ただし、先にも書いたとおり、粘度の高い硬い油を注すとその場で、もうどうしようもない事になってしまいますので、浸透潤滑剤以外は決して注さないで下さい。
2.鍵穴以外の通常の箇所への注油
緑の丸で囲った場所など、鍵穴以外への注油は、基本的にはシリコンスプレーがお勧めです。
シリコンオイル、シリコーンスプレーなど、メーカーによって名称は異なりますが、スプレータイプならどれでも大丈夫です。
(塗りこむタイプのシリコンオイルもありますが、それはここでは使えませんのでご注意を)
シリコンは、中で膜を作るので、長期間そこにとどまります。
ただし、シリコンは細かい隙間には入り辛いと言う欠点もあります。
もちろんグリーススプレーなどの粘度の高いものに比べると、全然入りやすい方ですが、それでも浸透潤滑剤ほど入って行きません。
隙間が小さくてシリコンスプレーではオイルが入っていかない場合、浸透潤滑剤は、細かい隙間にもオイルが入っていきますで、浸透潤滑剤をご購入ください。
またすでに内部に錆が発生している場合、シリコンスプレーでは、錆に浸み込んで行き辛いので、この場合も浸透潤滑剤の方をお使いください。
浸透潤滑剤は、細かい隙間に入っていってくれますので、シリコンスプレーだと、オイルが入って行くのかどうか分からないと、自信のない場合も浸透潤滑剤が良いかと思います。
ただし、反面出ていくのも早いと言う欠点もありますのでご注意を。
シリコンスプレーを注した場合よりも、早めに(頻繫に)注油する必要があります。
浸透潤滑剤で一番よく売られているのは呉工業のCRC5-56です。
少し高額なのですが、CRC5-56の中でもスーパー5-56が、長持ちするかもしれません。
なお余談ですが、ホームセンターでは、グリーススプレー・シリコンスプレー・浸透潤滑剤が並んで販売されていることがありますが、間違えてグリーススプレーを買わないようにご注意を。
グリーススプレーは粘度が高く、細かな隙間から油分が入っていくことはありません。
グリーススプレーは、中を分解して大きな隙間から、もしくは部品に直接注油する際には最適ですが、隙間から注油すると言う、普段のお手入れには不向きです。
また、ホームセンターの油のコーナーに、グリーススプレー・シリコンスプレー・浸透潤滑剤が並んでいても、そこに並んでいる浸透潤滑剤は5-56ではない事が多いです。
5-56は同じコーナーの別の棚や、カー用品や自転車用品のコーナーにある事がありますので、覚えておくと5-56が無いと悩まずに済むかと思います。
3.ドア丁番の注油
ドア丁番への注油は、下の写真のように、ドアを持ち上げて、丁番の上の部品と下の部品にすき間を作った状態で注油出来るなら、やはりシリコンスプレーが、長期に油の膜を張ってくれるので良いです。
しかし、持ち上げすぎて、上の部品と下の部品が分離してしまうと、ドアを嵌めるのが大変です。
ですので、加減が分からない場合は、持ち上げない方が良いでしょう。
また、一戸建てやアパートなどの場合は、そもそもドアを持ち上げて丁番にすき間を作れない構造の丁番が付いている事もあります。
丁番を持ち上げてすき間を作れない場合は、丁番のどこかには細かい隙間がありますので、その隙間の箇所を探し、浸透潤滑剤を入れるのが良いかと思います。
大切なお家のドアや錠前。
日頃の適切なメンテナンスで、寿命も延びるし、快適に使うことが出来ます。
また、メンテナンスをしていても、動きがあまり良くならないようになったら、分解して注油などの必要がありますので、その際は鍵の専門業者にご依頼をされてください。
福岡市および福岡市近郊の都市であれば、当店、カギの救助隊福岡のが対応していますので、その際は是非ご連絡ください。
それでは今日のブログはこの辺りで。



